昭和基地でのモバイルデータ通信の運用開始

昭和基地は32名の限られた人数で運営されているため、業務面・生活面いずれにおいても他の隊員との連携や協力が必要不可欠です。また、隊員ごとに活動エリアが異なる上、天候等の急変により突発的な対応が求められることもあるため、迅速な連絡手段の確保が重要となります。

2004年にインテルサット衛星通信設備が設置されて以降、インターネットの利用が可能となり、基地主要部の屋内ではWi-Fiも使えるようになっています。その一方で、屋外では簡易無線(CR)やUHFなどの無線トランシーバーがほぼ唯一の通信手段となっていますが、以下のようなデメリットが考えられます。
 ・会話内容が隊員全員に届くため、個別の連絡には向いていない (長時間占有できない)
 ・相手が応答できない状況では連絡が取れない
 ・エリアによっては電波が入り難い場所がある
 ・連絡手段が音声のみである
 ・無線トランシーバーの携帯(持ち運び)が不便

上記のデメリットを解消するため、屋外でもインターネットが利用できるよう通信エリアの拡大を目的として、63次夏期間中にアンテナを設置してデータ通信環境の整備に取り組みました。同時に、情報共有がスムーズにできるよう電話やチャットなどの共通のコミュニケーションツールをインストールしたスマートフォン端末を隊員全員に配布しました。

これらの施策により、従来は「相手の都合が良いタイミングに音声通話する」ことだけに制限されていた伝達手段が「いつでもどこでも好きなタイミングでデータ通信できる」ように劇的な変容を遂げ、隊員たちからは早速「便利になった」との反響が出始めています。相手に合わせることなく自分のペースで仕事ができるため時間を有効活用でき、音声だけでは伝わり難い内容についても文字や映像を加えることにより正確に伝えることが可能となりました。他の隊員との意思疎通が図りやすく連携がスムーズになり、屋外でも資料閲覧やインターネット検索ができるなど作業効率性の大幅な向上につながることへの期待が大きいです。今後もさらに、一年間の越冬生活を通じて、より有効な活用方法を模索して実践していきたいと考えています。

将来的には、「位置情報を活用した非常時における隊員の安否確認」や「IOTを活用したドローンや重機の自動制御」などに応用することにより南極地域観測の高度化実現を見据えています。今回の取り組みが、その第一歩になれば幸いです。

昭和基地の屋外でデータ通信している様子 。撮影:JARE63 光野和剛(2022年2月22日)

(JARE63 光野和剛)

国立極地研究所、NECネッツエスアイ株式会社プレスリリース「南極域で初! 昭和基地でローカル5G実証実験を実施」