気球浮揚式UAV訓練@久住滑空場

大気中には様々な微粒子(エアロゾル)が浮遊しており、気候変動に影響を及ぼしています。
これまで、日本の南極地域観測隊ではエアロゾルの多様な観測を実施しており、63次隊においてもエアロゾル観測を予定しています。

気球による観測では高度20km30kmまで到達することができますが、気球が破裂した後に地上に落下した機器や採取したサンプルの回収が困難となります。これでは、1100万円前後の観測機器が使い捨てとなってしまいます。一方、無人航空機(UAV, Unmanned Aerial Vehicle)を使用した観測でもエアロゾルは観測できますが、こちらの場合、機器回収は可能ですが、到達可能な高度は成層圏最下部付近のせいぜい10kmまでであり、気球の到達高度には及びません。

そこで63次隊では、高高度まで到達できる気球と回収が容易なUAVを組み合わせることにより、両者の利点を活かした観測を実施する方針です。エアロゾル観測機器を搭載したUAVを気球に懸吊し、それらが上昇する過程において観測を実施します。観測終了後、設定された高度でUAVは気球から自動的に分離し、放球点上空まで自律滑空することにより回収が可能となります。

気球浮揚式UAVでのエアロゾル観測方法のイメージ

8/31~9/34日間、大分県の久住滑空場において気球の放球する訓練を実施しました。
気球の浮力がとても大きいため、ほぼ同重量の錘と滑車を利用して気球を機体付近まで立ち上げる手順となります。放球では、風の強さが大きく影響します。訓練の期間中は、風が強く苦労しましたが、メンバーで協力して放球することができ、手順を習得することができました。

気球放球訓練の様子
撮影: JARE63 光野和剛(2021年8月31日)


気球放球訓練の様子[タイムラプス]
撮影:JARE63 光野和剛(20219月1日)

エアロゾル観測装置として必要となる「光散乱粒子計数装置」(OPCOptical Particle Counter)や「気象ゾンデ」、機体を切り離すための「カッター」等についても実習を通して仕組みを理解しました。
今回の訓練で訪れた久住は自然が豊かで、夜は星空がキレイでした。また、ご指導いただいた林先生とご支援いただいた大里さんに感謝いたします。
昭和基地において期待されるデータ観測ができるようメンバー一丸となって頑張ります!!

メンバー集合写真(強風のため気球が変形しています)
撮影:林政彦(2021年9月2日)

 

(JARE63 堤雅貴、岩本勉之、根岸晃芸、光野和剛)