地震をとらえる

昭和基地では様々な方法で地球の変動を観測しています。今回は、その中の一つ、地震観測について紹介します。

 

昭和基地では第3次隊の頃 (19592月) から地震計での自然地震観測が行われてきました。第8次隊 の1967年から短周期3成分 (東西・南北・鉛直成分) と長周期3成分の地震計による本格的な地震観測が始まりました。以来、50年以上に渡って、地震観測が継続されています。

日本時間20212132307分(1407UTC)に福島県沖で発生した地震(震源位置:北緯37.7度、東経141.7度、深さ49.9km、マグニチュードMw7.1 ,米国地質調査所(USGS)発表)による地震波形が、日本から14000km離れた昭和基地に設置してある広帯域地震計1と超伝導重力計※2で記録されました。

 

1 広帯域地震計:周期約0.1秒から数百秒の広い周波数帯域をカバーしている地震計。昭和基地に置いてある地震計は周期0.02秒から360秒の変動を記録可能。全球的な震動を観測するのに適している。

2 超伝導重力計:重力センサーを安定な超伝導磁場の中で磁気浮上させ、微小な重力変化を検出することができる装置。地震に伴う震動も重力変化の形で検出することができる。

昭和基地の広帯域地震計で観測された福島県沖の地震動鉛直成分波形(時間軸は左から右)。
昭和基地の超伝導重力計で観測された福島県沖の地震による重力変化(時間軸は右から左)。
今回地震を観測した昭和基地の地震計室内の広帯域地震計。左から鉛直・南北・東西の3成分を観測している
撮影:JARE62 西村祐香(2021年1月15日)
同じく地震を観測した昭和基地の重力計室内の超伝導重力計
撮影:JARE62 西村祐香(2021年2月4日)

 

日本以外の地震でも、たとえば日本時間20212102219分(1319UTC)にニューヘブリデス海溝で起こった地震(震源位置:南緯23.1度、東経171.6度、深さ10.0km、マグニチュードMw7.7 USGS発表)などの地震波形も記録しています。

南極は大陸内での地震がほとんどなく、プレート境界域でも大きな地震が起きづらいため、近場の地震の影響を受けずに遠地の地震を記録することができます。例えるならば、静かな場所で地球のあちらこちらで発生した地震を聞いているのです。これらのデータは今後解析され、地球内部構造の解明などに役立てられます。

昭和基地の広帯域地震計で観測されたニューヘブリデス海溝における地震動鉛直成分波形(時間軸は左から右)。
昭和基地の超伝導重力計で観測されたニューヘブリデス海溝における地震による重力変化(時間軸は右から左)。
2月10日ニューヘブリデス海溝における地震、2月13日福島県沖における地震と昭和基地との位置関係。

 

地震のシグナルは、地球の内部構造を知る手がかりとなりますが、一方で、人々に大きな被害を与えることも我々は忘れていません。今回紹介した地震により被害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げます。

 

(JARE62 西村祐香)