管理棟で震度2を記録

710日、南極昭和基地 管理棟で震度2の揺れが記録されました。

今年、ブリザードが昭和基地の建物に及ぼす影響を調べるため、建築担当の私が持ち込んだ「被災度判定計」を、管理棟1階から3階に1つずつ取り付けています。

3階に取り付けた被災度判定計で、お昼に震度2を計測しました。

震度2を記録した地震計
撮影:JARE61 鈴木 聡(2020年7月10日)

 

あっ、でも、地震じゃないですよ。南極昭和基地では、開設当初から地震観測が続けられていますが、未だ有感地震は1度も観測されていないですから (1)

 

揺れの原因は吹雪 (ブリザード) でした。

710日に風速30m/sを超える強風を伴った吹雪の為、外出禁止令が出されました。61次隊では2度目です。

風速30m/sを超える強風を記録
撮影:JARE61 鈴木 聡(2020年7月10日)

 

 

外出禁止令が発令されると管理棟食堂入り口にある装置をクルリと回し「外出禁止」にして隊員達に知らせてくれます。

外出禁止の掲示
撮影:JARE61 鈴木 聡(2020年7月10日)

 

 

地吹雪で視程が悪く、食堂横のサロンから東部地区を見ても6070m先の発電棟しか見えません。

ブリザードの様子
撮影:JARE61 鈴木 聡(2020年7月10日)

 

ブリザードの時は、食堂内にゴーゴー音が響き、建物が揺れます。やはり3階の方が揺れが大きく震度2になりました。

 

このデータが後々、昭和基地の新しい建物に反映され、隊員が安心して生活・観測が出来るようになればと思います。

 

(JARE61 鈴木 聡)


1:

南極大陸があるプレートの周囲は、発散型(海嶺など)境界に囲まれていているので、収束型 (海溝やトラフ境界近くに位置する日本と違い、大きな地震はほとんど発生しません。昭和基地では第3次隊の頃 (19592月)から地震計での自然地震観測が行われてきました。第8次隊 の1967年から短周期3成分 (東西・南北・鉛直成分と長周期3成分の地震計による本格的な地震観測が始まりました。以来、50年以上に渡って、地震観測が継続されています。その1967年から2020年までに南緯58度以南で発生した地震の分布を見ても、昭和基地の周りで地震は発生していません。この領域内では、1998032503:12:25UTCに南緯62.877°東経149.527°で発生したマグニチュード8.1の地震が最大で、最寄りと言っても650kmくらい離れた)フランスのデュモン・デュルビル基地では震度3の揺れを感じたとのことです。この地震はプレート内で発生した巨大地震で、世界的に見ても珍しい地震でした。尚、53年間の間に南極大陸とその周辺で発生したマグニチュード8以上の地震はこの1回だけ、マグニチュード78の地震は14回でした。南極は日本と比べると揺れない、そして動かない地面と言えます。

 南極での地震観測は、「静かな場所で、遠くで発生した音を、小さな音ももらさずに聞く」、そんなイメージでしょうか。国際観測網のいち観測点として、地球のあちらこちらで発生した地震を捉えています。

現在、昭和基地で地震観測に使われている長周期地震計 (STS型地震計、奥)と短周期地震計 (HES型地震計、右側)。
撮影:JARE61 小原 徳昭(2020年7月14日)

(JARE61 小原徳昭、青山雄一)