「しらせ」船上では2月5日から3月5日まで、気象ゾンデ観測を実施していました。
1日1~2回、ゴム気球にヘリウムガスを充てんし、15センチほどの大きさの測定器(気象ゾンデ)を紐でくくり付け、甲板で上空に放ちます。ゾンデが上昇しながら、気温や湿度、風、位置(GPSデータ)などを測定し、電波でデータを発信。船上のアンテナで受信します。
この観測は、大気や雪氷の研究観測を担当する佐賀勝己隊員(60次越冬隊)と石野咲子隊員(61次夏隊)が実施。さらに、気球の準備や、データ受信用アンテナの操作、放球の安全確保などのため、昭和基地でゾンデ観測を実施していた60次の気象担当隊員など、多くの隊員が支援に入りました。気球とゾンデを空に放つ「放球」の作業は希望する観測隊員やしらせ乗員が交代で実施しました。
今回の観測では、東経36度から東経120度まで、「しらせ」が南極大陸沿いを東に進む航路上で気象ゾンデを揚げました。南極氷床周辺の海域で広範囲に気象データを測定し、氷床上での観測データと組み合わせて、大気循環の仕組みや変化が氷床にどのように影響するのかを調べるのが目的です。さらに、測定結果については即時にWMO(世界気象機関)に報告し、各国の気象予報機関などが使えるようにもしました。
期間中、風の強い日や積雪の日は、放球者が転倒する危険があるため放球を延期しました。実施を決めた日でも、船尾側甲板の風向きは予想が難しく、上に揚がるはずの気球が風で横に流されかけたこともありました。「航走中の放球経験のある人が隊内におらず、実施可否の判断に苦労しました」と石野隊員。「予定していた40発の観測をやりきれてほっとしています。支援してくれた隊員のおかげで現場はいつも明るく励まされました」と語りました。
(JARE61 寺村たから)