次世代の極域船 氷海航行試験が目指すもの

1月29日、「しらせ」では昭和基地沖を離岸してまもなく海洋観測が始まり、午前中には氷海航行試験が行われました。「しらせ」には氷海を効率的に航行するための設備が整っていて、そのうちの一つに融雪散水装置があります。融雪散水装置はポンプで汲み上げた海水を船の前部および側部から放出することで船体と海氷上の積雪との摩擦を軽減し、船体にかかる抵抗を減らすための装置です。

昭和基地沖の「しらせ」外観。写真左下の穴から海水が放出される。
撮影 : JARE61 小野村知之(2020年1月13日)

 

氷海航行試験ではこの散水装置を起動する場合と起動しない場合での航行を交互に行い、それぞれの船体挙動の違いを解析して散水装置の効果を評価します。氷海航行には船が止まることなく前進して砕氷を行う「連続砕氷」と、後進して助走をつけてから氷に衝突し船の自重で氷を割る「ラミング」の二つの航法があります。今回の氷海航行試験は観測隊同行者の松下と、同じく同行者の私・小野村が担当しました。往路と復路の両方で連続砕氷中とラミング中に散水試験を行い、散水装置の効果を評価する基礎的なデータを取得しました。これらの基礎データを解析することで「しらせ」の航行指針に貢献し、さらには将来的な極域船の設計に役立てていくことが目標です。

「しらせ」艦橋で散水装置と氷況の記録を取る松下。
撮影 : JARE61 小野村知之(2020年1月29日)

 

いよいよ復路の行程が始まりました。「しらせ」と乗員全員が無事に日本に帰れることを祈念して、この辺りで失礼させていただきます。ご安全に!

 

(JARE61 小野村知之)