星の電波で地球を測る~多目的アンテナによるVLBI観測

114日の20時半から15日の20時半までの24時間、昭和基地の東エリアにある「多目的衛星受信アンテナ(多目的アンテナ)」を使ったVLBIVery Long Baseline Interferometry、超長基線電波干渉法)観測が実施されました。VLBIは、遠くの天体が発する電波を地球上の複数のアンテナで受信し、受信時刻を比較することで、アンテナ間の距離を精密に測定する観測法です。地球の回転や地殻の動きを調べるために実施されています。

多目的アンテナが入っているレドーム。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月14日)
レドームの中には直径11メートルのパラボラアンテナが。写真はアンテナのディッシュ(皿)を下から見上げたところです。アンテナは意外と素早く動き、見ていると怖いくらいです。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月14日)

VLBI観測は世界各地のアンテナで同時に行われます。114日からの観測では、193の天体からの電波を数分ごとに次々と受信していました。アンテナレドームに入らせてもらうと、対象の天体が切り替わるごとに、直径11メートルの大きなアンテナがダイナミックに回転したり、上下したり。すごい迫力です。

 

この観測は主に、地圏モニタリング担当隊員と多目的アンテナ担当隊員が実施しています。観測中、隊員はアンテナがプログラム通りに動いているかや、観測データが受信できているかをチェックし続けなければならず、24時間気が抜けません。

多目的アンテナから徒歩1~2分のところにある衛星受信棟の内部。VLBI観測をしている24時間のあいだ、担当隊員はここに詰めて、アンテナの状況や受信データを監視します。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月14日)

 

17日、再度アンテナレドームを訪問すると、多目的アンテナを担当する60次隊の内海雄介隊員と61次隊の落合哲隊員が半年に一度のメンテナンスをしていました。

アンテナの駆動部に登ってモーターの回転数を確認する落合隊員。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月17日)
多目的アンテナを担当する、60次隊内海雄介隊員(右)と61次隊の落合哲隊員。
撮影:JARE61 寺村たから(2020年1月17日)

多目的アンテナが建てられたのは30次隊のとき。いまから30年以上前です。アンテナがレドームによって守られ、そして何より、隊員による丁寧なメンテナンスによって、多目的アンテナはいまでも現役で機能しつづけています。

JARE61 寺村たから)