富士山高所訓練

昭和基地から南へ約1000km離れた氷床上に、ドームふじ基地があります。付近の氷の厚さは28003000mあり、氷の中には過去数十万年間の地球の気候や環境変動を復元できる情報が蓄積されています。63次隊では、夏期間に雪上車で約1か月かけてドームふじ基地へ到達し、間もなく予定されている、氷床深部に向かってアイスコアを掘削するプロジェクトに向けた準備作業を行う予定です。

ドームふじ基地は、標高3810m、年平均気圧600hPa以下、年平均気温-50℃以下の極低温の環境下に位置します。富士山山頂よりも高い場所での作業になるので、参加予定の隊員は出発前に高所訓練を行います。訓練は2回に分けて実施されますが、1回目の訓練が823日~25日に富士山で行われ、7名の隊員が参加しました。

訓練では、まず医療と野外観測支援の隊員から高山病についての講義を受けた後、実際に自分の体がどのように反応するのかを体感しました。高所では平地で動くよりもすぐに息が上がります。自分では平気と思っていても、実際にパルスオキシメーターで測定してみると、酸素飽和度が低下していることや脈拍も増加していることが確認できました。数字の変化が人によって異なることや、高所に滞在することで低酸素状態に慣れてくることがわかりました。頭痛やむくみが出た隊員は少々辛い思いもしましたが、内服薬で症状が和らぎ、投薬の効果を実感していました。

観測隊は出発に向けて、着々と準備を進めています。

パルスオキシメーターと簡易血圧計での測定。
撮影:JARE63 澤 友歌(2021年8月24日)
簡易気象計測器やGPSの使用方法も確認しました。
撮影:JARE63 澤 友歌(2021年8月23日)
雲海からの日の出を眺め、南極に思いを馳せる隊員。
撮影:JARE63 澤 友歌(2021年8月24日)

 

(JARE63 澤 友歌)