その1の続きです。
2月9日、まずはRAS係留系の回収を試みました。昨年設置したポイントに到着後、トランスデューサーという装置を船から海に下ろして、係留系に生存確認の音波信号を送りました。
RAS係留系が”生存”していれば音波で返事があるはずですが、いっこうに確認できません。ここでもし、船の周りに海氷がなければ、とりあえず「おもりを切り離して浮上せよ」という信号を送り、浮き上がってきた係留系を目視で捜索することもできますが、海氷の多いこの海域では浮きあがってきたとしても見つけられない可能性が高くなってしまいます。
何度か音波で生存確認信号を送りましたが、やはり返事はありません。係留系の不具合か、氷山と一緒に流されてしまったのか、はたまた発信機の故障か……。この日はRAS係留系の回収を断念し、翌日に備えてシーソー係留系の設置点へ移動しました。
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2月10日、気温マイナス5℃で小雪の舞う中、シーソー係留系に対し、RAS係留系と同じように生存確認の音波信号を送りました。
今度は応答がありました!シーソー係留系は“生存”しているようです。船からの距離も分かりました。幸いこの付近には海氷が少なく、開放水面が広がっています。おもりの切り離し信号を送りました。
すぐさま、係留系から「切り離し了解」の信号が送られてきました。しかし、浮かんでくるはずの係留系が見当たりません。多くの隊員が甲板に出て水面を見渡しましたが、とうとう見つかりませんでした。
係留系は発見できませんでしたが、判明したことがあります。係留系からの応答があったということは、船上の音波発信機は正常だということです。そこで、翌日RAS係留系の捜索をもう一度行うことになり、夜のうちにRAS係留ポイントへ移動しました。
その3へ続く……。
(JARE61 寺村たから)