教員南極派遣プログラムBLOG

出発前隔離

63次教員派遣の渡邊&武善です。

現在、63次隊は隔離施設に滞在しています。緊急事態宣言も解除され、感染者数も減少しつつある昨今ですが、観測隊は「南極へコロナウイルスを絶対に持ち込まない」という重大な責務のもと、昨年度から厳しく健康管理に気を配ってきました。隔離施設では他者との接触を避けたまま、各自の個室で2週間を過ごします。この間には、2度のPCR検査も行います。

他の隊員と対面で会うことはできませんが、隔離期間の間も、63次隊の行動期間であることに変わりはありません。平日は、午前に1回、午後に2回の計3回のZoomミーティングが行われます。Zoomミーティングのテーマは「危険予知活動」「救急医療」「計画停電」と様々です。今回のブログでは、そんなZoomでのミーティングの内容の一部を紹介したいと思います。

「合言葉は『情報共有』」(執筆:渡邊)

観測隊員がしらせ船上や昭和基地で安全に観測・設営作業が行われるようにするためには、それぞれの隊員が安全に行動できることが重要です。では、各自が安全に行動するためには何が必要でしょうか。

合言葉は『情報共有』だと感じました。

先日の研修では、『観測隊運営Wiki』というシステムについて澤柿副隊長より説明がありました。このWikiにより、観測隊員がいつ・どんな作業を行うかを共有することができたり、観測隊の情報や経験を貯めておき、次の隊に引き継ぐことができるようにしたりするそうです。

また、危機予測活動についての研修では、昭和基地での夏期設営作業で建設作業を行う際の安全活動や危機予測活動のお話がありました。専門的な知識や技能がなくても、積極的に設営のお手伝いをしようと考えています。そんな中で作業中に注意するべきことを学ぶことができました。

ZOOM研修中の様子
撮影:JARE63 渡邊雅浩(2021年11月1日)

 

牛尾隊長の「海氷上と氷床上における行動技術と安全対策」では、南極という非日常空間で、知らない危険がたくさんあることを学びました。一口に氷といってもいろいろな種類があり、それぞれに危険が潜んでいること、今までの観測活動の危険情報やヒヤリ体験を共有することの重要さを改めて感じました。

『夏・越冬期間中の野外行動 基地では味わえない楽しさ、辛さ。美しく、恐ろしい自然を存分に』との牛尾隊長の言葉通り、南極の自然を存分に味わうために、この研修で必要な情報共有の方法を学び、知識を得て、南極へ行きたいと思います。

 

「ネットワークに関する講習(担当:LAN・インテルサット 三井隊員)」(執筆:武善)

昭和基地のネットワーク事情については、観測隊ブログ「教員南極派遣プログラム」の中でも以前に紹介しましたが、実は観測隊の行動中、もっとも長く滞在する場所は昭和基地ではなく南極観測船「しらせ」です。特に、昨年と今年は国内から南極まで直行するため、例年以上に長く「しらせ」の中で過ごすことになります。

そんな「しらせ」では、昭和基地と異なりWebの閲覧が行えず、メールのみが使用できます。また海上には基地局も存在しないため、携帯電話(スマホ)も圏外になってしまいます。そのため、観測隊はこの隔離期間を使って、自身の情報機器に様々な設定を行います。

設定変更する電子機器
撮影:JARE63 武善紀之(2021年11月5日)

 

私たちが使う電子機器は、自分たちの想像以上に「万全のインターネット環境があること」を前提としたものが多いです。機内モードでスマホのアプリをいくつか起動してみると、よくわかるかもしれません。また、仮にしばらくは使用できたとしても、一定期間のうちに一度も管理サーバに接続できないことで、ライセンス認証が切れてしまい、突然使用ができなくなるソフトウェアも近年では当たり前になってきました。「しらせ」に乗船している期間は連続で30日を越えるので、私のコンピュータに入っているソフトウェアも幾つか使用ができなくなります。これは思わぬ落とし穴でした。他にもスマホの電話番号を用いる所有物認証も、出港後は帰国後まで行うことができません。

IoTもクラウドも、常時接続できる万全のインターネット環境があってこそのサービスです。これらのサービスは裏を返せば、今や世界的にそれだけインターネットが普及していることを意味しています。是非皆さんも「万全のインターネット環境がなかったら」を想像してみてください。インターネットという技術の偉大さ、生活基盤としての重要性があらためてよくわかると思います。

 

日本を出発する日も間近に迫ってきました。国内準備を念入りに進めていきたいと思います。

(JARE63 渡邊雅浩、武善紀之)

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