教員南極派遣プログラムBLOG

事前授業「冷凍庫の温度をモニタリング」(日出学園)

63次教員派遣の武善です。

以前の記事、事前授業「南極で動く環境測定装置を作ろう!」では、microSDカード記録式のデータロガーを生徒達と作りました。

南極で使われる測定装置には、計測結果を無線で逐一送信するタイプの測定装置もあります。micro:bitには標準で無線機能(Bluetooth)と温度センサが備わっており、中学生の授業ではこの機能を活用した測定装置を作りました。

※第63次南極地域観測隊は現在、隔離中です。本授業は、隔離前に実践したものです。

授業の最初には、全員で「【極地研公式】#29 おうちで極地「3分でわかる!極地研」第6回 高層気象観測用ゾンデ」を見ました。授業では本シリーズを何度か見せていて、オープニングのペンギンとシロクマが人気です。

「おうちで極地」を視聴する生徒
撮影:JARE63 武善紀之(2021年10月27日)

 

映像視聴の後は、校内に設置されている百葉箱と比較しながら、ラジオゾンデについて少しだけ解説しました。ラジオゾンデは、気球に取り付けて飛ばされ、上空の気圧や気温、湿度などを連続的に観測し、測定値を無線で地上に送信する装置です。

課題の説明
撮影:日出学園中学校 生徒(2021年10月27日)

 

実際にメディアルームの中で気球を飛ばすことはできませんが、「無線で遠隔地の温度変化を測定する」ことの体験として、生徒達とは教室内に用意した冷凍庫の温度を測定してみました。

冷凍庫の温度は-18℃程度とされており、これは昭和基地における7月の平均気温(2021年7月の場合は、-18.1℃)に相当します。気象庁ウェブサイトの過去の気象データ検索のページでは、千葉や北海道のように昭和基地を指定して、過去の気象データを表示することができます。

2人1組でプリントを参考にしながら、プログラムを組み立てていきます。最初はうまく動作しないグループもありますが、試行錯誤しながら自己解決していきます。

授業プリントの一部
撮影:JARE63 武善紀之(2021年10月27日)

 

相談しながらプログラミングに取り組む生徒
撮影:JARE63 武善紀之(2021年10月27日)

 

装置が完成したら、送信機側のmicro:bitに電源付き外部モジュールを接続し、いよいよ冷凍庫の中に装置を設置します。


冷凍庫の中に設置されたmicro:bit
撮影:JARE63 武善紀之(2021年10月27日)

送信機と同一のグループコードを設定した受信機には、送信機の温度センサの値が逐一送られます。この受信値は、リアルタイムにグラフとして画面に表示することができます。

データ受信中のmicro:bitコンソール
撮影:JARE63 武善紀之(2021年10月27日)

 

庫内に設置したmicro:bitの温度がみるみる下がっていくことが確認できます。「僕のはもう0℃まで下がった!」「○○が扉を開けたからまた少し温度が上がっちゃった!」と、生徒達も楽しそうでした。

この実習は取り出した後も面白く、micro:bitの冷たさに驚いたり、弱々しかった表示が段々と明るく戻って行ったり、手の中で暖めることで温度がぐんぐんと上昇するグラフを見ることができたり、色々な発見があります。

冷凍庫から取り出したばかりのmicro:bit
撮影:JARE63 武善紀之(2021年10月27日)

 

実習を行う過程で、生徒達からは「南極には低温状態でも動くバッテリー持ってくんですか? それとも、大量のバッテリーを持っていくんですか?」「結露で機械は錆びないんですか?」「無線ってどれくらい届くんですか?」など、様々な疑問も出てきました。「観測隊を支える技術」に興味を持ってもらうことができたように思います。

生徒達の疑問への答えは、観測隊同行の中で今後伝えていきたいと思います。

 

(JARE63 武善紀之)

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