教員南極派遣プログラムBLOG

事前授業「南極で動く環境測定装置を作ろう!」(日出学園)

63次教員派遣の武善です。
私は高校で情報科という教科を教えています。情報科は2003年から始まった比較的新しい教科ですが、理科や数学と同じように全ての高校生が履修します。授業ではコンピュータを活用しながら、プログラミングやネットワーク、データサイエンスの基礎を学んでいます。南極観測を支える数々の技術と相性の良い教科だと思っています。

技術の観点から南極観測を身近に感じてもらおうと、今月は事前授業として、南極の昭和基地で使用を予定している「環境測定装置」を生徒達と作りました。

この装置はマイコンボード(micro:bit)に温湿度・気圧センサ(BME280)を接続し、小型ロガー(OpenLog)を介して、メモリーカードへ明るさ、温度、湿度、気圧の4項目を300秒ごとに記録します。

動作中の環境測定装置
撮影:JARE63 武善紀之(2021年9月30日)

 

南極観測隊では、さまざまな測定装置が使われています。南極では装置の不具合や調整も自分自身で行わなければならず、観測隊員は測定装置についても熟知しています。生徒達は事前授業で、測定装置の作成、調整、設置、回収、分析の一連のプロセス、すなわち観測隊員の仕事を疑似体験しました。

担当に分かれ、データシートを見ながらブレッドボード上への配線や、Makecodeエディタを用いたプログラミングを行います。プログラムはブロックを組み合わせて作ることができます。

Makecode上に作られた環境測定装置のプログラム
撮影:JARE63 武善紀之(2021年9月18日)

 

初めて行う作業も多く、最初は生徒達も戸惑った様子でしたが、互いに相談しながら作業を進めていくうちに、段々と装置の仕組みもわかってきたようです。

配線後のブレッドボードを手に持つ生徒
撮影:JARE63 武善紀之(2021年9月18日)

 

2学期だけではなく、1学期のうちから、装置に使うパーツの1つ1つを半田付けする作業を始めていました。

BME280に半田付けを行う生徒
撮影:JARE63 武善紀之(2021年5月7日)

 

ハードウェアとソフトウェアの両方が完成し、無事micro:bitLEDに気温や湿度が表示された時には歓声が上がりました。
事前授業では学校内に測定装置を設置し、約3日間のデータを収集しました。セットした測定装置を回収し、メモリーカードの中身を確認する時は、生徒一人一人にとってもドキドキの一瞬です。

表計算ソフトで、測定結果をグラフに可視化
撮影:JARE63 武善紀之(2021年10月1日)

 

今後は、私が昭和基地周辺で実際にこの装置で測定した数値を送り、昭和基地から配信する南極授業に先立って、分析を行ってもらおうと考えています。

南極授業では、観測隊がこれまでに発見してきた様々な観測結果や知見を紹介する予定です。今回の経験をもとに、生徒達が南極観測をより身近に、まるで自分達が南極観測隊員の一員であるかのように、感じることができればと思っています。

 

(JARE63 武善紀之)

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