教員南極派遣プログラムBLOG

南極授業を終えて(渡邊雅浩)

南極に熱中する人をテーマにした南極授業。
これが今回の私の南極授業のテーマでした。

南極授業出演者・スタッフと昭和基地、19広場にて
撮影:JARE63(2022年2月5日)

 

南極地域観測隊には、南極まで研究・観測をしにいく人と、それを支える人がいます。
世界は今、コロナウイルスの拡大で大変な時期ですが、長期間隔離をしてまで南極に来て、観測や研究を続けている、南極観測の重要性や、それを支える設営隊員のがんばりを、日本の子どもたちに伝えたいという思いがありました。

今回、私は第63次南極地域観測隊に同行し、2回の南極授業を行いました。
1回目の南極授業は、2022年2月4日(金)に所属の宇都宮大学共同教育学部附属小・中学校へ向けて行いました。2回目は、2月5日(土)に宇都宮大学で小学生、中学生、高校生、大学生を含む一般に向けて、オンラインで開催することができました。

2月4日の附属学校への南極授業では、南極で観測をする研究者の紹介として、長期滞在をさせていただいたラングホブデ氷河の話を中心に、南極の氷山や氷、地球温暖化について子どもたちに考えてもらう授業を行いました。
子どもたちの南極への興味・関心を高めるためには、子どもたちの南極のイメージと、実際の南極の現実とにズレを見出し、そこに驚きを感じさせたいと考えました。
「南極の氷は減っています。しかし、地球温暖化で南極の気温が上がって南極の氷が融けているわけではないんです。」という杉山先生のお話から、「どういうこと?」と、目を輝かせて話を聞く子どもたちの姿が印象的でした。
また、環境保全の金重真実隊員と調理の香月雅司隊員の、二人の設営隊員から、南極観測を支える設営隊員の役割についてお話を伺いました。観測隊が南極をきれいに保って日本へ帰るためには、ごみを厳しく分別したり、燃やせるものは燃やして体積を小さくしたりして日本へ持ち帰っています。今回の南極授業では、金重隊員が持ってきてくれた野外で観測隊員が出した生ごみやうんちを燃やしてできた炭の横で、カレーを食べる授業を行いました。

中継中のGoogleフォームの回答表示の場面(2022年2月4日)

 

人間が南極で環境に配慮しながら観測活動を続けていくには、設営隊員なくては行うことができません。この超重要な人たちにスポットを当てるのも、今回意識したことです。

2月5日の宇都宮大学での南極授業では、観測系のお話として、ラングホブデ氷河の話に加えて、南極での重力測定(岡大輔隊員)や火星探査候補地の研究(野口里奈隊員)についての話をすることができました。また、設営では、高木佑輔設営主任に出演していただいて、南極でのチームワークの大切さについてお話いただきました。

設営についてお話する高木祐輔隊員
撮影:JARE63(2022年2月5日)

 

宇都宮大学での南極授業参加者からは、

「とても興味深い授業でした。地球の自転する遠心力の効果を体験できるなんてすごい体験でした。地球を継続的に観測したり、調べたりする事の重要さも知れましたし、南極は自然科学者にとっての楽園(研究材料の宝庫という意味で)なのだなぁ、と深く思いました。多くの人の協力で成り立つ場所で、環境に配慮した活動もしているのも知れたので、今後も誰のものでもない地球みんなのための南極であり続けて欲しいと思います。Zoomの配信形式の授業だったお陰で遠方にいる私達親子も貴重な授業に参加する事ができました。本当にありがとうございました。観測隊の皆さんが思いっきり研究や観測ができ、無事に帰国されるのをお祈りしています。」

「渡邊先生、南極からの授業ありがとうございました。この授業を行うために昭和基地の全ての隊員の皆様の協力があって叶ったものであると思います。極限の世界の中でも、皆さんの表情が笑顔であることが印象的でした。自分の仕事や研究に対する充実感を感じながら従事されているのでしょうね。昭和基地での研究が日本だけでなく世界の未来を築くものになることを確信しています。応援しています。本日は本当にありがとうございました。(父)ぶどうジュースの重さが重くなったことに驚きました。南極の重力の強さを体で感じたいので、南極に行ってみたいと思いました。昭和基地の皆さん、これからもお仕事頑張ってください。(小5息子)」

など、多くの感想をいただくことができました。

また、今回の南極授業では、国内の先生方の協力のありがたさを改めて感じることができました。
附属学校との南極授業でT2で一緒に授業をしてくれた大塚先生とは、附属小学校に赴任して以来、数多くの苦楽を基にしてきた同志でもあり、よき教えをいただいた大先輩でした。大塚先生と授業ができてよかった!ありがとうございます!

南極授業:大塚先生とのやりとりの様子(2022年2月4日)

 

また、附属学校の会場のスタッフにも恵まれました。川上先生、秋澤先生を始め、多くの先生方に応援していただきました。また、私が派遣中の日々の校務を引き受けてくださった先生方にも感謝しかありません。
そして、一番は子どもたちです。授業中にとても良い発表、質問をしてくれました。また、最後に子どもたちが画面をオンにして手を振ってくれた映像は忘れることができません。

附属学校との中継の様子(2022年2月4日)
附属小の体育館から手を振る子どもたち
撮影:極地研広報室(2022年2月4日)

 

2月5日の宇都宮大学での南極授業はコロナウイルス再拡大を受けて、完全オンラインとなりました。
関係の皆様にはご心配とご苦労をお掛けしましたが、どうにかやりとげることができました。
こちらも、宇都宮大学の人見先生、出口先生、昭和内のスタッフ、そして参観者の皆様がとても盛り上げてくれて、よい雰囲気の中、授業を行うことができました。
あらためて、63次隊で南極授業ができてよかったなと感じた瞬間です。
参観してくださった皆様、どうもありがとうございました!

南極授業後の昭和基地の様子
撮影:JARE63(2022年2月5日)

 

今回の2回の南極授業で伝えられた観測隊の活動は、海上に出ている氷山の一角のように、少しの部分です。帰国後には、海に隠れている大部分の内容を何らかの形で発信していければと考えています。まだまだ南極に熱中している人を紹介していきたいです。
この出会いを大切に、国内での教育活動に励んでいきたいと、気持ちを新たにしております。
この度は、誠にありがとうございました! 

~南極に熱中する授業をつくる!~

(JARE63 渡邊雅浩)

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