2022.02.08
カテゴリ: JARE63
南極授業を終えて(武善紀之)
こんにちは、教員派遣の武善(日出学園中学校・高等学校)です。
2回の南極授業、無事に終了いたしました。私は、1月29日に主に外部の方へ向けた授業を、2月2日に主に勤務校生徒へ向けた授業を行いました。ご覧いただいた皆様、お忙しい中、本当にありがとうございました。
また、両授業とも会場への配信と合わせて、YouTube Liveによるライブ配信を実施しました。ライブ配信のアーカイブは日出学園の公式YouTubeチャンネルに残っていますので、是非ご覧ください。
1月29日授業
2月2日授業
※2月2日の授業について
当日、日出学園内で通信障害が発生し、ライブ配信時の映像、音声に乱れが生じております。ご参加いただいた方々には、大変ご迷惑をおかけしました。 復路「しらせ」船内で、武善が録画映像を再編集し、帰国後に再度アップロードする予定です。 高画質の授業動画については、4月上旬のアップロード予定ですので、そちらをお待ちください。
11月10日に日本を出国してから、南極授業当日の1月29日まで、実に様々な体験をすることができました。オーロラも白夜も、氷山も、ペンギンもアザラシも数多く見ることができました。美しく魅力的な景色の広がる南極、授業の題材自体は豊富にあります。その中で、僕は「何を」「どのように」子供達へ届けるか、届けたいのか。「南極は新しい何かを得る場所ではなく、今までの自分を振り返る場所」とは、南極授業登壇者のある方の言葉です。自己への問い掛けは授業前日まで続いていました。
最終的には「技術」・「技術者」にテーマを絞り、試行錯誤を重ね、当日は思いのすべてをぶつけた授業が出来たと思っています。
「南極で技術?」と、多くの方は疑問に思われるかもしれません。南極といえば、以下に掲載したような美しい自然を想像されることでしょう。確かにこれは、どれも私自身が撮影した写真です。
しかし、次の写真もまた、全て南極で私自身が撮影した写真です。自然に隠された秘密を解き明かそうとする時、現場にはいつも「技術」の姿があり、その裏には技術開発に勤しむ「技術者」の姿があります。また、観測だけでなく、南極という極限環境で生活する日々の中にも、「技術」の姿はあります。
私は、中学校・高等学校で「情報科」という教科を担当しています。情報科も、プログラミングや統計処理など、情報技術を中心に、様々な技術を扱う科目です。教員南極派遣プログラムにおいて、情報科の教員派遣は初ということで、「自然・人」に注目されがちな南極観測を、「自然・技術・人」という切り口で今回は扱ってみました。
授業内では、スペクトラムアナライザによる無線通信の可視化や、スマートスピーカー及びスマートリモコンを用いた南極―日本間のIoT実験、新谷隊員による自作重力計の実演など、南極で活躍する、あるいは南極を身近に感じることのできる様々な技術を、実演を交えながら紹介しました。授業内で扱ったコンテンツについては、後ほど項目別にブログを残すことができればと思っています。
授業全体を通じては、「観測隊・南極を縁遠い存在に思って欲しくない(身近に感じて欲しい)」というメッセージに拘りました。何だか凄そう(≒自分には難しそう)に感じてしまう「研究者・技術者」も、「面白そう」「楽しそう」と日常に興味を抱き、簡単なモノづくりや実験をするところから、研究者・技術者生活がスタートしています。授業では生徒達と日本で作成した計測装置が、かなり高い精度で昭和基地の環境を計測できた事実も紹介しました。
また、両日程ともに、国内では有志生徒「ひのぺんず」による南極特別授業が行われました。彼女達が南極に関する概要をクイズ形式で楽しく視聴者に伝えてくれたおかげで、自分の南極授業は「技術」に絞った構成を取ることができました。どちらが欠けても、今回の「南極授業」は成立しません。遠く14,000km離れた地で、生徒達とコラボ授業が出来たこと、本当に嬉しく思いました。
視聴者アンケートは集計中ですが、
「武善先生をはじめ隊員の皆様の少年のような眼差しがとても印象的でした。興味をもち不思議に思い行動する、些細なことからのスタート!改めて探究していくことの壮大さを感じました」
「親子共々、今日見せていただいたことお話していただいた事はずっと覚えていようと思います」
「自分とは関わりのない土地でもあり、簡単には行けない南極大陸とつながっていることに感動しました」
「子供も普段意識しないインフラの大切さを感じていました」
など、多くのあたたかいコメントをいただくことができました。
南極授業は終わりましたが、日本に帰るまで、これから1ヶ月以上の船旅となります。その間も、授業でも扱った「衛星通信」の恩恵で、こうして日本に向けてメッセージを発信することができます。南極授業では扱えなかった、あるいはもっと深く扱いたかった南極の魅力/南極の技術を、今後も発信していくことができればと思います。どうぞ、今後もよろしくお願いいたします。
(JARE63 武善紀之)